2022-01-11 | ブログ
2021年末に出版された『ファシリテーションとは何か』ナカニシヤ出版、を早速読みました。
各界からファシリテーションに関わっている研究者の知見を集めたご本となっています。
(アマゾンより)
今まで存知あげなかった先生も執筆されていて、とても興味深い内容でした。
この中で特に印象の残ったのが3つありましたので、ご紹介します。
1.ファシリテーションとコミュニケーションの関係(はじめにから)
pⅹⅴ
「人々が集まって、やりとりをしながら共同で何かを行うときに、コミュニケーションの場を保持し、そのプロセスに働きかける取り組み・仕組み・仕掛け」
とあります。
ファシリテーターがコントロールする場では、自由にコミュニケーションがとれないのではないか?という批判に対する筆者(井上義和)による考察から出た、ファシリテーションの定義です。
フリーに話をしてよいという場では、コミュニケーション能力の高い人がその場を支配してしまい、コミュニケション力の高くない人は話に入ることもできない状態となることが散見されます。
ところが、ファシリテーターがファシリテーターとして機能している場であれば、コミュニケーション能力の差をファシリテーターが「場を保持する(ファシリテーターの中ではホールドすると呼んでいます)」ことで、格差が縮小し、対等な話し合いの場ができます。
今まで、うまく言語化できなかったコミュニケーションとファシリテーションの関係を整理してくいださっています。
お陰でスッキリ!できました。
2.ファシリテーションの書籍(第4章から)
筆者(牧野智和)が2000年からの「ファシリテーション」「ファシリテーター」という名前が含まれている書籍を集計して、
その結果を棒グラフで示してくださっています。(ここでは、ご紹介しづらくて申し訳ないです)
このグラフによると2000年~2006年はほぼ順調に増加し、2007年が突出。その後幻想し、2011年、2013年に急増、その後はほぼ横ばいな感じです。(とってもおおざっぱで申し訳ありません。詳細は、本書をご覧くださいませ💦)
この増減の理由は定かにはなっていませんが、2011年、2013年は3.11関係のこともあるのでは?と推察できるのでは?(根拠がないのですが)。2013年以降は毎年10冊以上が出版されているようです。
毎年の出版数を見れば、ファシリテーション、ファシリテーターが普及しているという根拠にはなると思います。そして、単なる流行ではなく、社会に必要なものなのだと。
一度、集計してみたかったので、集計くださって、感謝です。
ファシリテーションに関する本は、ビジネス書として出版されていることが多いとのことです。ビジネスの場で「非生産的な会議から脱却し、根回しによる妥協や利害調整ではなく。組織のメンバーそれぞれが知恵を出し合って論理的にも感情的にも納得できる結論を導き出すアプローチがファシリテーションである(堀『ファシリテーション入門』2003年)という需要が増えてきたことが原因の一つなのかもしれません。
3.ファシリテーションの概念整理(第5章から)
ファシリテーションは「促進する」「容易にする」という意味があります。では何を「促進する」のか?何を「容易にする」のか?について、整理してありました。(地元、愛知県にある南山大学の中村和彦先生の担当パートです)
親和図がかかれており、輪は3つ。
一つは、タスク(課題解決/合意形成)
一つは、ラーニング(体験/学習)
最後の一つ、リレーション(関係性)
となっています。
そして、タスクの項目に「まちづくり」が位置付けられていました。
そうなんです!
まちづくりのワークショップはタスク重視なのです。限られた時間にその回の目標を達成することが求められます。
(大切な税金で開催されていることが多いので、当然といえば、当然なのですが…。意外に他の分野の方からは、まちづくりってゆるゆるしているねと言われることがあります。)
このことは、中村先生の図を見て「やっぱりそうだよね」と自分で納得してしまいました。
「こんなことをやっているよ」と他の分野で活躍しているファシリテーターと話をすると、「とってもタスク重視なんだね」と言われます。
参加してくださっている市民の方が、納得して(次の行動に進んでみようと思って)くださるし、毎回の到達したかった目標は達成している!という課題を毎回クリアしているのでした。
改めて、自分がやってきたことをふりかえり、整理してくださったお陰で言語化できました。
ふりかえる中で、まちづくりにおけるファシリテーション、ファシリテーターに求められること(自分はどう対峙してきたのか?も含めて)改めて考えることができました。そして、これからについても!
さらには、ずっと温めている単語、「熟議民主主義」にもファシリテーションは必要なのだという第6章もあり、わくわくして一気に読んでしまいました。
ノウハウやスキルでないファシリテーションのご本でした。