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2014年 4月

地縁団体について考える2 ~町費の徴収について~

2014-04-29 | ブログ

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前回は町内会の法人化についてご報告しました。

今回は法人化の有無は別として、町内会の会員から集めた会費である「町費」の徴収方法について、裁判所の判断がありました。平成14年の判決ですが、こちらも備忘録としてメモしておきます。

 

 

町費の使途について

町費は月にいくら、年でいくらと町内会ごとに決められています。私の住む町内会では組長が一年に一度、各世帯を回って集金し、町内会長(総代)宅へ持参し、まとめられた町費を会計さんのところへ持っていきます。会計さんが銀行へ入金する。という手順です。

この町費の運用は、総会で承認された予算に従って執行されていきます。この支出の中には、子ども会への助成やPTAへの助成、町内の資産(公民館など)の運営に充てられるものもあります。

そして、従来であれば何の躊躇もなく、(地縁団体について考える1のような経緯があり)神社や墓地を守っている寺院などにも支出されていました。ところが神社等への支出を前提とする町費の徴収については、信教の自由を侵害しているとの判決がおりていたのです。

支出が違法というのではなく、違法な徴収方法だった、ということでした。

そうでした。町内会は任意団体でした。前回の「地縁団体について考える1」でも公法人とはいえ、法人は公益財団法人や会社などに比べるとイレギュラーな存在です。

 

判決の内容は?

その判決は、平成14年4月12日、佐賀地裁でありました。

ざっとした内容は、「集めた町費から宗教法人である(氏神さまですが)神社関係費の支払いを拒んだ町内会会員に対して、町内会会員の取り扱いをしないとの判断をした町内会の行為は、神社神道を信仰していない町内会会員の信教の自由を侵害しており、違法であるので、町内会会員の地位確認請求が認められました。ただし、町内会の不法行為による慰謝料請求は棄却されました。」というものでした。

なんだか分かりづらいのですが、

集めた町費の中から、勝手に宗教団体である氏神さまに関係する費用を支出するのは、氏神信仰をしていない(もっといえば、氏神信仰を認めていない宗教を信仰している)町内会会員も、氏神さまを無理やりに信仰をさせられているということになる!

そのことを申し出たところ、町内会から脱退してくれと言われた。これは強制ではないのか?信教の自由を侵している行為ではないのか?自分の払った町費から神社のために支出をしなくても町内会会員として認めてほしい!

裁判所に訴えるにはお金に換算しなくてはいけないので、慰謝料を請求する、ということにします。

というようなことのようです。

(1)争点は?

この判決の争点は、①町費の徴収方法自体についての適否、②原告が町内会の構成員という地位を有しているのか、③不法行為が成立するのかの3点でした。

①町費の徴収方法については

一般会計と神社関係費を区別せずに徴収したことは違法としています。

→区別しなくてはいけないということですね?または、集金時や総会などで確認するということになるのでしょうか?

②原告の町内会での地位は

もちろん、判決では、「町内会の構成員」。使途に対する考え方が違うと言って、町内会の構成員からはずす!のは認められないちうことですね。

③不法行為については

慣習に従って徴収していたこと、原告の指摘後は改善しようとの試みがあったことなどを考慮して、「故意、過失」がなかったとして違法性はなかったということになっています。

(2)前提:氏神さまは宗教なのか?

氏神さまは宗教団体といえるのか?という問題があります。この判決では、

信教の自由と政教分離を定めた憲法第20条1項、後段「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない。」

公の財産の支出または利用の制限について規定している憲法第89条「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない事前、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」

でいう「宗教団体」あたるとしています。

なので、信教の自由を侵害していると。

*参考文献 小倉一志「公報判例研究」『北海道大学論集、54(4)』

 

神社等と町内会の関係は?

神社について、

権藤成卿によると、律令制前の日本では、社稷(しゃしょく)という考え方があったそうです。社(しゃ)は土地の神、稷(しょく)は穀物の神をあらわしていて、それぞれの土地でそれぞれの穀物を尊ぶという氏神様の考えで、この考え方から「共同体」が生まれてくるとのことです。(佐藤優『宗教サバイバル』より)

また、中川剛『日本人の憲法感覚』では、日本のコミュニティと神社は本来深く結びついていて「社」の字は祭壇に土を合わせて成立していて、それ自体で土地の神を示すものになっているとされています。そして、地域社会が神社を維持することは、社会の統合をはかるためであって、信仰を強制することとは無縁である、ともいわれています。

しかし、法的には、この判決のように捉えるのが法理論に適っているようです。

 

明治維新によって、もともと峻別されていなかった神社と寺院が明治政府の廃仏毀釈政策によって無理やり分けられ、戦後、氏神さまを国家神道の反省から宗教法人としたことから、このような複雑なことになってきたような気がします。

コミュニティが衰退している現在、神社の行事である祭りはコミュニティの人々がアイデンティティをもてる貴重な機会となっています。祭りの復活も聞かれます。ニュータウンでは、中心となる神社がないので、○○祭りとして新たな機会を作っています。子どもたちもお祭りは楽しみにして、この町の一員なんだなぁと感じるときなのではないかと思います。

そのことと、断りもなく町費から神社の費用を支出してもよいということはイコールではないかもしれません。ただ、コミュニティの視点からすると、律令制の前から連綿と続いてきて、コミュニティの中心となってまとめてきた神社を宗教法人としてドライに割り切れないものを感じます。その歴史をふりかえって、もう一度捉えなおすということは難しいのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

地縁団体について考える1 ~法人化~

2014-04-23 | ブログ

新年度に入り、町内会について考える機会がありました。地縁団体について以前調べたことと併せて備忘録として書きとめておきます。

まずは、認可地縁団体について

 

地縁団体の法人化

1991年4月の地方自治法の改正(第260条の2)によって、自治会・町内会は法人となることができるようになりました。

町内会の人々がお金を出し合って造った公民館や代々の墓地や神社の祠などは町内会として持つことができるようになったのです。ただし、法人としての権利が主張できるのは、町内会で不動産を所有するためだけであって、その他の契約行為などの法的な主体にはなれません。

申請は基礎的自治体の長の認可でこと足ります。法務局で法人登記をすることはしなくて良いようです。

その背景は、戦後から地方自治法の改正までは、登記上は代表者の所有ということにしておいて、実際には町内会全体の所有という一つの不動産に対して法律と実態の差がありました。「町内会所有の土地をとりあえず、町内会の代表の持ちものとしておこう」として登記してあったところがありました。すると、その代表が亡くなると、子どもがその土地の相続をすることになります。町内会のものだったのが、いつの間にやら個人のものになってしまっていたのです。そこで、子どもに事情を理解してもらい、もともとの町内に戻そうとすると、子どもに相続放棄をしてもらったり、所有権移転をしてもらったりと、非常に煩雑な手続きをしなくてはなりません。また、子どもが全国に散らばってしまっていたり、亡くなって相続権は孫が持っていたりします。子ども、孫と複数になってくるとより利害関係人は増え、手間は増すばかり…

このようなことを避けるために、地縁団体が不動産に限って、主体となれる様になったのですね。

 

地縁団体のおさらい

(1)法人格が付与される「地縁による団体」とは?

・ 一般的な自治会活動を行っていること

・ その区域が住民にとって客観的に定められていること

・ その区域に住んでいるだけで構成員になれる団体(構成員は世帯ではなく個人)であること

・ その区域の相当数(一般的には過半数)が構成員になっていること

・ 規約を定めていること(目的、名称、区域、主たる事務所の所在地、構成員の資格に関する事項、代表者に関する事項、会議に関する事項、資産に関する事項)

を満たすことでした。

(2)税金は?

・ 法人税は公共法人扱いとなり、収益事業のみ課税対象となります。

・ 固定資産税、不動産取得税は、多くの自治体では減免の対象になるようです。

(3)性格は?

・ 権利義務の主体となれます。

・ あくまでも住民による任意団体です。

・ 正当な理由がない限り、その区域の住民の加入を拒むことはできません。

・ 認可の前後で檀t内の運営の在り方は変わりません(民主的、自主的、差別なし)。

・ 特定の政党のために利用することはできません。

 

地縁団体と宗教法人

では、町内にある神社、地域のお祭りの中心となるいわゆる「氏神」さまを地縁団体は所有することができるのでしょうか?

「氏神」さまは、宗教法人となっています。公共法人の扱いをうける地縁団体との関係は?実は、これを確認したくて、備忘録を書いていたのでした。

ここからは、大阪府高槻市のホームページより…

「地縁団体はいわゆる公共団体ではありません。一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体であり、宗教活動の禁止や宗教上の組織等に対する支出の制限を定めた憲法上の規定(第20条3項、第89条)との関係は生じることはありません。」

地方自治法上も神社の祠や墓地は地縁団体の保有資産をなりうる、とも記載がありました。

これで、対外的には地縁団体が神社や墓地を所有することには問題がないことが確認できました。

 

次は、「地縁団体について考える2」で、内部の問題、町費から神社の費用を出すことについて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

防災体験の記~本所防災センター~

2014-04-21 | ブログ

OLYMPUS DIGITAL CAMERA IMG_5610行ってみたかった本所防災センター

web上の合意形成システムCOLLAGREEで名古屋市総合計画へのコメントをファシリテートする機会が昨年暮れにありました。「安心安全」の窓を担当したのですが、そのときに「本所防災センター」がどなたかのコメントにありました。

http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-hjbskan/honjo-riyou.htm

そのときから、一度行ってみたいと思っていましたが、急に行く機会が訪れました。前日の金曜にTELにて申し込んだところ、ツアーのコースはすでに決まっていましたが、とにかく行ってみることにしました。都市型水害体験(洪水の中でドアを開くという体験。名古屋市にでかけることが増えましたので、是非体験したかったのです)は、あいにく、予約がいっぱいとのことで、断念。これは次回のお楽しみとしておきます。

コースは、

①シアターで映画鑑賞 「3.11で何を経験したのか」というようなタイトルで、東日本大震災時のことをまとめてありました。

②消火器体験 消火器の説明と一人一人が実際に消火器を持って、映像の火をめがけて放水(本当に入っていたのは水でした)をしました。見事、消えたら「消火成功!」の文字がでます。不成功の場合は、めらめらと火が大きくなっていくのです。本当に消火器をさわって火を消すという経験は初めてでした。学校での避難訓練時には体験する場面もありましたが、代表者が一人か二人でて消火するというものでしたので、うれしい体験でした。

③暴風雨体験 雨合羽の上下+長靴を借り、時速20mの風と雨にさらされる体験でした。こちらは、雨がひどく、顔をあげていると洋服まで濡れてしまうので、下を向いて風をやり過ごすことしかできませんでした。実際の台風はもっとひどいような気がしました。ここでは体験も大切ですが、目の前で他人が体験するのを客観的に見たら、とても興味深い気付きがあるような気がしました。

④煙体験 部屋の上半分の空間が煙になってしまい、その下を移動するという体験でした。また、一瞬部屋が真っ暗になり、停電したときの体験もできました。長野の善光寺にある「お戒壇巡り」のようでした。

⑤地震体験 震度7の体験をしました。起こることが分かっていても、動けないものだなと思いました。揺られているときには机の脚にしがみついているだけで精いっぱいでした。

ツアーガイドさんもついてくださり、あっという間の2時間でした。

体験から思うこと

何度体験しても、普段の備えにはなかなかつながらないだろうなぁと思いました。少しずつでも体験後に、防災グッズや非常食などを揃えていけるようにしないと!と思うのですが、帰ってきてしまうと、その気持ちが遠くなってしまいます。もちろん、忘れないように出口には「防災クイズ」もコーナーもあり、おさらいができるようになってはいました。

もう少し違った形で体験をふりかえる、例えば体験の後にHUG(避難所運営ゲーム)を初めて会った人たちとやってみる!というのも良いかもしれません。帰宅困難者という想定にはなりますが。いつも以上に想定外の回答がありそうです。多様性の視点がまた、磨かれますね!

と、そこまではいかなくても、参加した人々で体験ツアーが終わってから、10分でも20分でも感想などを共有する時間をとるだけでもいいのかもしれません。同じ時刻に同じ体験をしたのですから、共有もしやすそうです。実際に、私のツアーには小学生の子どもが3人ほどいましたが、体験中に話しかけたりして、仲良くなりました。その子たちがどんなことを思ったのか、考えたのか、とても興味があるところです。

いずれにしても、せっかくの貴重な体験のあとは、ふりかえり、共有する時間があるといいなぁと思いました。レヴィンの実験にもあるように、しっかりと記憶でき、次の行動につながるのではないかと考えました。提案してみても?

 

 

 

初!営業研修もワークショップで。

2014-04-14 | ブログ

IMG_5454購買心理を考えるワークショップ

 営業職の新入社員研修を初めてさせていただきました。このような機会を与えてくださった方に感謝しています。その研修での気付きをシェアします。

営業は日興證券と朝日生命保険で経験していましたが、営業に特化した研修は初めてのことでしたので、どうしたものかと悩みました。が、やはり、私の得意なワークショップで営業に大切なことに気づいてもらうのが一番!とワークショッで行うことにしました。

  購買心理について話し合い、その後、寸劇のようなロールプレイングをします。そして他の参加者からのフィードバックや感想を受け取るというプロセスにしました。

 まずは、自分たちの生活の中での購買シーンを思い浮かべ、一般化しました。そこには、営業のテキストにあるようなエッセンスが詰まっていました。

 そして、ロールプレイングでは、寸劇をつくり、実際に演じたり客観的に見たりすることで、寸劇の中にある実体験との乖離や不足しているところ、アイディアなどに気がついたり、確信したりできました。

教えられるのはなく、自分たちでつかみ取ったのです。きっと詳細は忘れてしまっても、強く印象に残ったことはずっと忘れずに心に残っていることと思います。

 

教育は引き出すことを実感

 教育は詰め込むことではなく、education=引き出すこと とよく言われています。

 クルト・レヴィンという社会心理学者が1945年に行った実験結果があります。クルト・レヴィンは、グループダイナミクスを提唱し、「場の理論」を発表した、ファシリテーターにとってはルーツの一人です。

 このレヴィンが、産後のママたちに赤ちゃんにはビタミンが必要で、オレンジジュースを飲ませるとよいことを①講義形式で教える②自ら飲ませる事を決定するワークショップ形式でおしえることとしました。そして2つのグループを比較しました。講義もワークショップもともにかける時間は25分です。

 その結果は?

2週間後にオレンジジュースを飲ませているのは①35%、②85%でした。4週間後には、①55%、②100%でした。自分たちで決定したグループの方がその後の実行率も高く、参加した全員が赤ちゃんの健やかな成長のためにオレンジジュースを飲ませていたのです。

 このように自己決定することがその後の行動にも大きく影響します。ワークショップ参加者の潜在的な能力を引き出し、その能力によって自己決定するのです。すると、忘れることなく、自分の決定には責任をもって対応できるのです。

 

講義形式で教えてもらうといのは、とっても効率が良いように見えます。今回のように半日かけてつかむことをさらっと数分で手に入れる事ができるのですから。しかし、どのくらい研修の内容が心に残り、実行されるのでしょうか?研修する側の気になるところですよね。

 この研修では、自分たちの生活の中から購買心理を導き出し、どのようにすれば「購入しよう」という気持ちになるのかを寸劇を考える事で練り上げました。その場で即興で行うロールプレイングも気付きは多いのですが、もう少し時間をかけてじっくりと作戦を立てて実演してみる、というのが初めて営業をする方には向いているのかもしれません。

そして、実際に参加した方々は見事に自分たちの力でつかみ取ったのです!購買心理の真理を導き出し、それを実行に移し、営業の極意に近づいていったのです。

さらに、「実践ではこんなにすんなりとはいかないだろう」「商品を勉強しておかなくては!」「お客様にメリットだけでなく、デメリットもきちんと伝える事が信用されることになる」などの鋭いふりかえりも出てきました。

さらっと言われただけでは、ここまでのふりかえりは出てこないと思います。自分たちで頭を使って導き出したものだからこそ、深い洞察や、実行の期待度が高まります。

参加者のみなさんの持っている能力が引き出せたのではないかと自負しています。

 

まとめ

研修はワークショップ形式で行うことが一般的になってきました。しかし、ただワークショップで話し合いをすればよいというのもではないことは、みなさん、お気づきのことと思います。

話し合いを実りのあるものにするためには、ファシリテーションのスキルが欠かせません。

参加者が納得し、次のステップに自分ごととして自ら移すためには、参加者の立場に立っったプロセスデザインが必要となってきます。どのように進めたら目的が達成できるのか、参加者が話しやすいか、無理なく決定できるか、話しやすい場ができるか…などなどファシリテーションの技術が活躍します。(「そんなこと既にやってるよ」という方からすると、ご自分のやっていることのあと付けでファシリテーション・スキルと命名されているのかもしれません)

この研修でも、参加者のみなさんは自ら考えて、より実践的な真理や実践のコツをつかみ取りました。詳細を忘れてしまうことはあるでしょう。しかし、このとき自分でつかんだ事柄は忘れる事はありません。表層的な記憶ではなく、潜在的な記憶の方へ移行しますので、必ず何かのきっかけで、ふと蘇ってきます。そして、その時の自分を思い出し、自分を信頼してあげることもできます。

ファシリテーターの側からすれば、ファシリテーション・スキルの中でも、プロセスデザイン(目的を達成するための話し合いの道筋や時間配分などを考える)が重要なポイントだと改めて考える事ができました。そして、何のためにこれをするのか、達成したい目的は何なのかについて、ワークショップの前に明確にすることが非常に大切であることも再認識しました。

今回参加した方々のご活躍をお祈りしています。

そして、ソーシャル・アクティにとっても、お役に立てる機会や分野が増えたことを喜んでいます。と同時に、精進しなくては!と改めて誓いました。

 お問い合わせは、social-acty @m4.catvmics.ne.jp まで

 

 

 

伝える技術(NVC)

2014-04-11 | ブログ

なんでわかってくれないのNVC 

先日、コミュニケーションの研修をしました。そのときに取り上げたのが「Non Violence Communication」でした。備忘録も兼ねて書いておきます。

 

 コミュニケーション研修のなかで「言いにくいことを主張する」を扱うときは大抵「アサーション(やわらかな主張)」というのをします。

お互いがwin-win になるように、相手のwin も考えて話しましょう。とか、まずは相手の言いたいことを聴きましょう。と言い、そのあとに自分の主張をしましょう!というのをします。私もそんな研修を受けたことがあります。

これはこれで、とっても実践的で、明日と言わず、今からでも使える!と思っています。

 ただ、自分の主張というよりも、もっと心の深くにある自分の感情や本当にしてほしいことは何か?について、しっかり自分と向き合わないと主張したいことすらわからないということってあるのでは?と思います。特に感情が高まっているときには、意地になってしまい、何を言ってくれても、何をしてくれても満たされないということになってしまうこともありますよね?

自分の感情だけでなく、ファシリテーターとしてもどうしたらいいのか?と戸惑うことがあります。

 納得の主張方法であり、相手の納得が得られる方法がありました。心理学者で、紛争を対話で解決に導いているというマーシャル・ローゼンバーグ氏のいう「Non Violent Communication(非暴力的会話)」です。その名の通り、自分や相手の心に暴力的でない会話の方法です。

 会話の中で心が傷ついたりすることってありますよね。これは、相手からすれば、他人の心に対して暴力をふるっていること、自分が言いたいことを我慢していることは自分の心に暴力をふるっていることになります。お互いに暴力的でない、自分の本当にしてほしいことを相手がしてくれるという充足感を伴う会話の方法なのです。

 

ステップは

1.観察して現状を把握する

2.自分の感情を把握する

3.感情の奥にある自分のニーズ(本当にしてほしいこと)を知る

4.はじめて要求を表現する

この順番に進めます。

例えば、

「彼と彼女が今度の日曜にデートの約束をしていました。ところが、彼のほうに急に仕事が入ってしまいました。これを聞いて彼女は『え~っ!楽しみにしてたのに!!』と怒ってしまいました。彼は何とかしたいとは思っているのですが、彼女の怒りは解けそうにありません・・・。」

←このたとえ話が一番わかってもらえました。

このとき、どうしたら、彼と彼女はお互いを傷つけることなく納得できるのでしょう?

NVCでこうなります。

1.(観察)

彼女「今度の日曜日に断れない仕事が入ってしまったのね。」

2.(自分の感情を把握)

彼女「日曜日のデート、とても楽しみにしていたのに、とても残念だわ。」

3.(本当の自分のニーズ、してほしいことを知る)

彼女「今度の日曜日はあなたの誕生日のお祝いをしようと思って、レストランを予約してあったの。一緒に食事をしたかったのよ。」

4.(はじめて要求を表現する)

彼女「夜6時からの予約がいれてあるのだけれど、その時間までに仕事を終えてくれると、うれしいわ。」

5.おまけ

彼「仕事は4時には終わるよ!その後、迎えに行くよ!!♪」な~んて。

こんなに冷静になって、本当に自分のしたかったことは何かを見つめ、相手に何をしてほしいのかをきちんと伝えることができれば、お互いの心を満たすコミュニケーションができますよね!

 『NVC ~人と人との関係に命を吹き込む法~』では、具体的な訓練方法が載っています。ただ、これはちょっと難しいです。「感情と評価を分ける」というのがとても難しい。いかに、評価を感情として取り扱ってしまっているか…を思い知らされます。

この取り違えが積み重なってくると、人と人が本当に傷つけあう「紛争」になっていってしまうのですね。きっと。

 

相手のニーズを探るのにもつかえる!

この方法、相手のニーズを探すことにも使えます。

1.(観察)

彼「今、君はとても怒っているようにみえるよ。」

2.(自分の感情を把握)

彼「僕も、日曜日のデートをとても楽しみにしていたから、とても残念だし、申し訳ないと思っているんだ。」

3.(本当のニーズ、してほしいことを知る)

彼「君を少しでもがっかりさせたくないから、僕にできる事があれば言ってほしいのだけど…。」

4.(はじめて要求を表現する)

彼「仕事は昼間の3時間、4時までには終わるんだ。その後からでも付き合ってもらえないかな?」

5.(おまけ)

彼女「ちょうど、6時からレストランを予約していたのよ!食事だけでも一緒にできるわね!!♪」

めでたしめでたし。

 

まとめ

いつもいつもこのように話が長いのは「面倒な人」になってしまいそうです。

本当のニーズを察してほしくてストレートではなく婉曲な表現をしてしまうことってありますよね。それで、察してくれないと悲しくなり、相手や自分の心を傷つけてしまう。そんなことがないように、NVCのステップで毎回表現するかは別としても、自分の本当ののニーズを考えるというのは重要なことだと思います。相手にも何をしてほしいのかがきちんと伝わるので、お互いに満足できます。

でも、自分の気持ちを伝えるときや、相手が何をしてほしいのかわからないときには、こんな素敵なコミュニケーションがとれるようになりたいと思います。日々、心がけて訓練しようと思います。

 

 


 
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