2014-03-27 | ブログ
「大災害後の回復力を高めるために」というテーマの講演を聞いてきました。3連動地震が懸念される中、何をしておけば早い回復ができるのか?についてとても参考になりました。
講演はアメリカ、パデュー大学政治学部准教授 ダニエル・アルドリッチ氏によるものでした。
大災害からの回復に必要な力は?
災害時に必要なものは日本では、定性的にコミュニティの絆だと言われています。アルドリッチ氏はこれを統計学的に検証していました。そして、一言でコミュニティや地域と言いますが、その単位は従来的には小学校区でした。しかし、氏の想定する範囲は極小のものでした。家ごとであったり町内ごとのレベルでつながりが強いと回復が早いというのです。アルドリッチ氏は関東大震災、阪神淡路大震災、インド洋津波、ハリケーンカトリーナの4つを事例として、人口に対する犯罪件数や人口密度、投票率などさまざまな数字を検証しました。その中でもっとも興味深い指標がありました。
日本の中の規模の似ている2つの地域を比較したものがあります。以下は、アルドリッチ氏の資料を記載します。
(アルドリッチ氏の資料より)
この表のどちらに地域の回復が早かったのでしょう?その地域で生まれ育ち、その地域で生活している持家の住民が多いと回復力が高いといえます。着色した3つの指標は地域アイデンティティ形成、地域の結びつきに寄与しているものです。ということで、もちろん、B地区のほうがより早く復興しています。
この他に氏は、区レベルの選挙投票率が高いこと、まちづくNPOが設立されている地区なども回復が早いと言っています。これは、住民が地域についての関心が高く、地域内の活動に熱心である指標でもあるといってよいのでしょう。
氏は、最後につながりをつくるために4つの施策を提言しています。氏はこのつながりを「社会的インフラ」と呼んでいます。
1.町内レベルで、そこに住んでいる人々のつながりをつくるプログラムを実施すること
2.地方自治体が住民を(孤立から)引っ張り出して、地域活動に参加するプログラムを実施すること
3.特定集団を対象にして、ある問題について話し合うようにすること
4.地域通貨
まとめ(感想や気づきなど)
1.コミュニティ内のつながりは災害後の回復には必必要なものだということが数値的にも確認できました。
2.氏の4つの提案について、地方自治体が取り組む施策としています。コミュニティのことは、コミュニティ内で解決する、それが自治でしょうと言われてきた私たちにとっては、「地方自治体が主体となって」ということに新鮮な驚きとやはりという納得がありませんか?
コミュニティのつながりづくりにには、住民の力だけではうまくいかないことがたくさんあります。ちょっと行政が力を貸してくれるといいのになぁという場面は数えきれません。ただ、それは住民の甘えとして活動を縛ってきたような気がします。
名古屋大学の廣井准教授も、以前参加した研究会で、東日本大震災時の帰宅困難者についての報告の際、提言として、ソフトの防災は地域コミュニティのつながりを作ることで、今後はそこに予算をつけていかなくてはならないのでは?とおっしゃっていました。社会的インフラ(社会的関係資本ですね!)の整備に注力していくことが減災になると。
3.話し合いの場を設定すること。これは、ファシリテーターにとってはお墨付きをいただいたようでとてもうれしいことでした。やはり、社会的インフラづくりには話し合いが必須なのですね!
4.地域通貨。いきなり地域通貨が出てきたので驚きました。が、私の論文を後押ししてくださったようで、これもうれしいことです。実は、地域通貨について論文を書いたのですが、「コミュニティの再生のツールとしての地域通貨」というタイトルでした。
5.孤立の問題も含めて、コミュニティの中につながりをつくっていくことが、減災にもなる!と確信を深めました。