2016-04-27 | ブログ
先回、「社会構成主義」と「対話」の関係についての気づきを掲載しました(http://social-acty.com/blog/date/2016/01/)。
今回は、その応用編『ダイアローグ・マネジメント』に書かれていました、対話による組織変革のリーダーシップについての気づきを共有できればと思います。
はじめに
社会構成主義では、「言葉」や「感情」も所属しているコミュニティの文化であって、こういうことは楽しいことである、とか、こういうことは悲しいことだなどという「言葉」と「感情」は文化とリンクしている、ということでした。
したがって、異なる組織や文化のもとでは、「言葉」の意味する内容、感情、反応までも異なるということでした。
ということは、「私」と「あなた」は背負ってきた文化や経験が異なるので、同じ「言葉」を使っていても、それが意味する内容や感情、反応も異なる、ということになります。
社会構成主義では、コミュニケーションとは「お互いに意味を作るプロセスであり、継続的な調整のプロセス」である、としています。進行中のお互いのやりとりの中で「意味」を創っていくのであるから、「意味」とは、話し手と聞き手の相互作用の結果としてある、となります。仲間内だけで通用する言葉は、その典型かもしれません。
「対話」や「コミュニケーション」には固定した概念があるのではなく、常に変化するものと捉えることがその後の理解が深まることになりそうです。
社会構成主義では、この流れが「意味」であるということになります。「意味」は固定しておらず、絶えず変化していますよね。
例えば、「やばい」という言葉があります。語源由来辞典によりますと、「あぶない。不都合な状況が予想されるさま。」となっています。ところが、昨今は、若者を中心にして「やばい」は美味しいとか楽しいなど肯定的な状況を強調する言葉として使われるようになっています。従来の意味と適用する状況が逆転していますが、意味が変化していることなのかもしれません。
このように同じ言葉でも意味が異なる用法をしている世代が集まって社会をつくっていくには、お互いの意味を共有することが大切になってきます。「対話」の場を創ることは、意味を共有することであり、その流れを集めて合流させることとなってきそうです。多様な意味の流れが集まり、さらに大きな流れを創っていく場であるということになります。
組織改革は
この考え方からすると、組織改革は、流れを合流させることで変化を促すということになります。今まで組織は、機械や機械の一部として喩えられてきたように固定したものと考えらえてきました。ところが、社会構成主義では、組織を常に変化している水に喩えます。そして、水の流れを合流させることが組織改革を進めることとなります。
ホールシステム・アプローチといわれる「対話」を中心にした組織改革の考え方は、ここからきていたのです。ある課題についての利害関係者を一堂に集めて「対話」する。その「対話」によって、意味の流れを合流させ複数の声が流れるようにし、その流れを見えるようにすることで、組織改革やその先の変革(イノベーション)へと自然に向かっていくことにつながるのです。
上記のことから、組織には対話が必要なのだということがわかってきました。「対話」の場には、複数の声となる多様な文化や背景を持ったたくさんの人が集まり、多角的な視点からの熟考を促すような場のデザインをすることが必要となります。
対話をデザインするには、より開かれた場であること、即興性がある場であることが条件となり、そこからクリエイティブが生まれて来、その場を継続することでイノベーションがおこると書かれています。
そして、『ダイアローグ・マネジメント』では、組織改革のための「対話」の場をマネジメントするリーダーについて、望ましい姿や具体的な方法を提起しています。
新しいリーダーシップ
『ダイアローグ・マネジメント』は、新しいリーダーシップ像を描いています。水の流れを扱うのですから、「俺についてこい」「言うとおりにしろ」ということは求められません。ファシリテーター型リーダーが求められます。
リーダーの心構えとしては、
①言葉はさまざまに解釈されるものであることを忘れない
解釈の違いをすり合わせる手段として「対話」がある。
②メンバーは「他の関係」も背負っていることを忘れない
組織にいるメンバーすべては、家族や友人、今までの人間関係を持っている。
すべての社員はその集団と組織にとって「自分は価値がある」と認められたいと思っている。
組織を率いるということは
①上の方針を実行すること
②チームをまとめること
チーム(組織)内のさまざまな声をどのように指揮するか(オーケストラの指揮者のように)。
どのように会話の句読点を活用するか。
どのようなカオスを減らし、調整を促進するか。
他にリーダーができることは何があるかを考える。
③後天的に修得するスキルが必要
ダイアローグ・マネジメントをはじめとしたリーダーのスキルはトレーニングで修得できる。
大まかに、このような5つの要素があり、詳細なスキルが掲載されていました。
ファシリテーターと共通する新しいリーダーのスキル
このなかで、ファシリテーターと同じことを求められていると特に思った部分があります。
それは、一つには、効果的な対話には「インプロ(即興劇)」の技術にかかっているというところです。
対話の場は、あらかじめ想定した通りに流れていくというよりも、ある程度の幅をもって、時に狭く、時に広い幅をもって流れていくというイメージです。
ファシリテーターは、ある程度の川幅を想定して、その中で流れていくように準備します。実際にどの程度の幅になるのか?他の力が介入してきた時の対応などを予め準備しておき、対話の場をファシリテートします。対話の場の運営に必要となるのが、いまここで起こっていることに柔軟に対応するインプロの要素ではないかと思うのです。
また、対話には準備が大切であるとしていることです。それは、以下の4つの項目についての調査や対応策などです。
①ハード・アジェンダとソフト・アジェンダ
ハード・アジェンダ 会議の目的、目標などの成果とされる具体的な課題
ソフト・アジェンダ 自由度が高い議題(メンバーの自由な考えを述べることを保障、問題のあらゆる側面からの意見を聴く、すべての可能性の議論を聴く)
ファシリテーターは、会議の目的、目標を明確にして、達成するための場をデザインします(ハード・アジェンダ)。その際のメンバー間で自由に意見がいえる環境を整えます。
②組織の力学を意識する
ファシリテーターも、メンバー間の感情にも配慮し、メンバーの参加意欲を向上させます。
③「外の関係」と「波及効果」
メンバーの背負っている「他の関係」から意見、スキル、レパートリーなどを組織に持ち込むように促す。
チームの決断がチーム内だけでなく、「他の関係」への影響も考慮する。
ファシリテーターは、発言の背景を探り、その発言の裏にある本音を引き出そうとします。
④物理的な環境
照明、机の配置など
これは、ファシリテーターにも必須の配慮です。さわやかな外の空気を吸いながらの対話と、キャンドルを囲んでする対話では、話す内容まで変わってきます。
ファシリテーターをしている者として特に共感をもった、リーダーとの共通点でした。
おわりに
フラン・リースのいうファシリテーター型リーダーにも共通する部分があります。『ファシリテーター型リーダーの時代』、この本が日本で紹介されたのは、2002年でした。日本で「ファシリテーター」という文字がタイトルになった初めての本です。この頃は、「対話」の有用性、必要性についての認識が今のように広まっていなかったこともあり、対話によるリーダーシップということには触れていませんでした。しかし、組織の活性化には、従来のぐいぐいと引っ張っていくリーダーではなく、メンバーの意見を聴き、モチベーションを上げていくリーダーが求められていると言われ始めた起点となるものであったと思われます。
パラダイムシフトの時代と言われ、『ネクスト・ソサエティ』の日本語版が顕れた時期と『ファシリテーター型リーダーの時代』が重なっていることは、必然なことだったのかもしれません。
そして、2016年の今では、ファシリテーションや対話(ワールドカフェをはじめとする対話の手法)に関する書籍も珍しくなくなっています。
すでにパラダイムはシフト完了に近づき、ネクスト・ソサエティに入っているのだと改めて気づきました。
2016-04-13 | ブログ
先日、金沢に行ってきました。
兼六園では、ソメイヨシノは終わりつつありましたが、違う品種の桜が次々と咲き、にぎわっていました。
兼六園では、若い女性の着物姿が多く見られました。少し年配の女性の着物姿もあり、落ち着きを感じました。
インターネットで検索してみると、金沢駅や兼六園の近くにはレンタル着物のお店が数件ありました。古都には着物が似合いますね。
若い方が着物を着ているのを見ると、着物文化は再興するかも?という気持ちにもなってきます。
今回は、着物の話題はおいて置きまして。
今回の金沢、外国人観光客が増えたような気がしました。
最近は、「外国人観光客(マスコミに取り上げられるのは中国人観光客がおおいのですが)は、買い物よりも体験や花見を好むようになった」という報道を目にするようになりました。お花見は国を問わず人気があるのでしょうか。
タクシーの運転手さんに聞いてみると、「金沢は外国人観光客は多い。しかもヨーロッパの人が多いなぁ」とのことでした。
私の感覚でも、兼六園やひがし茶屋街でも、たくさんの外国人観光客がいましたが、ヨーロッパ系の方は他の観光地よりも多い気がしました。
1.観光庁の速報から
2016年2月の観光庁の速報値では、平成26年1月から平成28年1月の外国人延べ宿泊者数は、
三大都市圏で毎年30%を超える増加を見せています。地方部では、平成26年から27年の1年では38.9%ですが、平成28年には70.0%の増加となっています。【図 1】(http://www.mlit.go.jp/common/001125865.pdf)
絶対数では、もちろん、三大都市圏が多いのですが、北海道をはじめ沖縄も地方部で検討しています。もちろん、京都も。【図 2】(http://www.mlit.go.jp/common/001125865.pdf)
また、国別では、やはり中国からの観光客が最多となっています。【図 3】
【図 3 出身地別外国人延べ宿泊者数】
(http://www.mlit.go.jp/common/001125865.pdf)
このグラフでは、ヨーロッパからの観光客はたいへん少ないこともわかります。
となると、タクシーの運転手さんのコメント、実際に見た感想と差異がでてきます。
金沢の観光客の内訳はないものかと探してみました。
2.金沢の状況
金沢市の「観光調査結果報告書(http://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/com/img/useful/exchangecity/kankouchousa-2014.pdf)」がありました。残念ながら、平成26年に調査した内容ですので、観光庁の資料と一概に比べるのは乱暴な部分もありますが、おおよその方向性はつかめるかと思います。(以下、キャプションでの説明がないものは、すべてこの報告書から抜粋しています。)
まず、金沢を訪れる外国人観光客の推移は、【図 4】のように、平成23年を底として平成26年まで順調に伸びています。
これを全体の中の外国人観光客の割合をみると【図 5】のようになります。
このグラフからみても、観光客の増加には、外国人観光客が寄与していました。
次に外国人観光客の発地を見てみると【図 6】のようになります。
この図からは、【図 3】の全国の割合と比べると、北米、ヨーロッパからの外国人観光客の割合がたいへん高いと言えます。
残念なことに、この原因は報告書に記載されていませんでした。
原因の一つに円安の影響があるのではないかと考え、為替の動向と外国人観光客数を比較してみました【図 7】。この図の為替レートは、4月第1旬をとっています。この報告書内で、観光客数が年間を通じて4月が一番多いことから、4月を取りました。
【図 7】では、平成23年からの外国人観光客の増加の場面では、円安が効果があるように見えますが、観光庁の速報では、この図にない平成27年、28年も増加しているとのことでしたので、大きな影響ではなくなっているようです。
今回は、兼六園、ひがし茶屋街を回りました。名古屋駅(特急しらさぎ)、宿泊したホテルでも、外国人観光客の団体ツアーに出会いました。
また、4~5人の団体が通訳と観光しているような場面も散見されました。
自治体、ツアー会社の努力だけでなく、通訳を依頼できる体制が整っていることも原因の一つかもしれません。
なぜ、金沢の外国人観光客の割合が多いのか、他の都市の割合と比較して何が言えるのかについては、今後の課題としたいと思います。
また、同じ古都である京都の動向について、比較したら興味深いものが出てくるかもしれませんね。
後日、TRYしてみようかと思います。
2016-04-02 | ニュースレター
「農福連携」という考え方があります。
農業と福祉が手を取り合うと、農業の担い手が増え、耕作放棄地も減る。障害者の方々の働く場ができる。
そんな考え方が農林水産省から始まっています。
その実現に向かって進んでいる会議があります。
実践+話し合いを繰り返しています。
その話し合いの場のお手伝いをする機会をいただきました。
気づきや学びの多い会議となりました。
ニュースレター第56号、こちらからご覧いただけます。