2017-03-10 | ブログ
愛知県、三河湾に浮かぶ3つの島。
日間賀島、篠島、そして、今回ご紹介したい佐久島です。
三河湾は豊富な漁場で、漁業が営まれています。
その中でも佐久島は「アートの島」として、県内では名前の高い島です。
いろいろな大学からアート作品を置いたり、建築したりして、アートを見つけながらのスタンプラリーも楽しいスポットです。
毎年、この島でアートを楽しんで、牡蠣しゃぶコース(残念ながら、三河湾では生牡蠣はたべられないのです)をいただくために訪れます。
予約は12:30。
9:30発の定期船に乗って、25分ほどで到着。お昼をいただくまでの間、島の中にあるアートを見つけスタンプを押していく散策をします。
行くたびに楽しいイベントが開催されています。
このときは、お雛様が飾ってありました。
古墳の島
ところが、今年は趣向を変えて、島の中にある古墳を見て歩くことになりました。ご一緒したメンバーに古墳大好き女子がいたようです。
いつもは西港から東港近くにある民宿まで南側を散策します。今年は、古墳群のある反対の北側ルートに初挑戦しました。
佐久島1.81㎢には古墳時代後期の横穴式古墳が38基、佐久島全体では47基の古墳があるそうです。
この中でも一番保存状態のよい古墳が山の神塚古墳というもので、古墳の中へ続いていく道には石が敷いてあり、中をのぞくとなんと、石棺のようなものが見えました。
申し訳なくて、写真は撮りませんでした。
看板を読むと、このあたりは海部族(海を生活の場とした)が住んでいたそうで、古墳はその海部族の高貴な方のお墓ではないかと思われます。
江戸時代には海運業で栄えたとされています。
(http://www.jichitai.com/kanko/catalog/2014/[愛知県西尾市]佐久島体験マップ.pdf)
島の中には八剱神社があり、この神社は「8つの剣を祭っていたり、素戔嗚、大国主神、大和武尊などを祭っていたりする(https://ja.wikipedia.org/wiki/八剣神社)」そうです。以前のブログでもご紹介しましたが、スサノオ、ヤマトタケルなどが祭ってあるのは、その土地が水の害に見舞われないように、その時はこの神社まで避難するように、という先人の教えのようです。
静かな三河湾でも荒れることがあったのか?いや、それよりも外海での漁や海運などの無事を祈ったのか?などの空想が駆け巡りました。
まさか、海部族って海賊ではないのか?三河にもバイキングがいたのか?などと空想を越えて妄想になっていったのでした。
小さな島ですが、ミステリーはまだまだたくさん、あるようです。
今回見つけた次回の宿題
石垣が浸食されてできたという島ですが、写真のように地層をよく観察できます。
地層にさわると、とても柔らかくて、手でポロポロと削れてしまいました。
こんなに柔らかいので、どんどん浸食されていってしまうのでしょうね。
この地層を構成しているのはなんという土壌なのでしょうか?
次回行くまでに、調べておかなくては!
そして、待ちに待ったお昼
実は、このかすかに見える右側にあるのは!こんな牡蠣盛り。
カキフライに焼き牡蠣、牡蠣しゃぶ、アイナメの煮つけ、なまこ、このわた(!)わかめのお味噌汁、最後にみかん。
一人当たり、20個近くいただいたのでは?
散策と妄想、そして美味しい海の幸。とても幸せな一日でした。
三河湾は一年中、美味しい魚介類が楽しめます。
是非、お越しくださいませ。
2017-02-27 | ブログ
『デンマークの教育を支える「声の文化」~オラリティに根差した教育理念~』
という書籍を読みました。
https://www.amazon.co.jp/デンマークの教育を支える-声の文化-オラリティに根ざした教育理念-児玉-珠美/dp/4794810539/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1487925420&sr=8-1&keywords=デンマークの教育を支える+声の文化
弊社のワークショップでも、対話を重視して進めるようになってきました。
対話で進めるのがぴったり!と思う案件が増えてきています。
そんなとき、以前NHKの番組で、対話によって社会課題を解決しようとしているまちがあるとデンマークのオーフスという市が紹介されました。
http://www.nhk.or.jp/documentary/aired/150207.html
その社会問題とは、若者がデンマークを捨ててISに行ってしまう。デンマークで描いていたイメージと違うと言ってデンマークに戻ってくると社会的に疎外されてしまう。それは、移民だけでなくデンマーク国民であっても、社会的な阻害感を感じている、孤立している若者(高学歴の若者もすくなくないのだとか)が多いというものでした。社会的な疎外感から社会的暴力へ転換していく…。それを防ぐためには、社会的包括(インクルージョン)を推進していくことが必要で、それはその人一人一人と対峙し、傾聴して対話することだとして、市として対話を進めている(オーフス モデル)というような内容の番組でした。
そのデンマーク発の「対話によって社会的統合を形成していく」という考え方の中心にあるものが、以下の「声の文化」だったのです。
声の文化のご紹介
デンマークの教育の基本理念は、デンマークの哲学者N・F・S・グルントヴィ(1783-1872)が構築した『「生きた言葉」と「相互作用」による対話」が根幹にあるとされている。
この理念をクリステン・コルが教育現場で具現化したと言われている。
言葉の定義として(本文p8より)
・オラリティ…声の文化 声としてのことばの性格
・リテラシー…文字の文化 文字を読み書きする能力
・オーラルな…声の文化に根差した声として機能している、声としての言葉に基づく、声に依存する・口頭的な・口伝えのといった意味
リテラシーは視覚を介した感受方法で、空間を切り離す感覚があるものである。一方、オラリティは聴覚であって、空間を全体的に捉え統合する感覚である。そして、声としての言葉は能動的である。
従って、話される言葉は、人間同士を互いに意識を持った内部(=人格)をして現れさせるため、話される言葉は人々を固く結ばれた集団にかたちづくる。
ここから、生きた言葉で語りあうこと「対話」が重要なキーワードであり、自国の生きた言葉こそがデンマーク人にとっての意味があるということが導かれています。「自分たちの実存を相互に確認していくことが可能な日常語を擁護し、デンマーク語によって国民自らを覚醒していくことこそが『啓蒙』である(p41)」となったとのことです。
自国の文化、言語に誇りをもって語り合う(対話する)ことを積み重ね、自分のアイデンティティを形成していく過程で、人と人が結ばれていくということも言えるのではないかと考えるのです。
まずは、自分の声を出す、対話を続け空間を統合していくこと、そして、自分のアイデンティティを形成していくことで、自分の生きている意味や存在を確認できます。そして、たくさんの人々が語り合うことで統合された空間が生まれていくのだということになるのではないでしょうか。
対話が世界をくっつける!?
ボウムは「対話は人々の切り離されたこころをくっつける」と言っています。その言葉の源泉はこの「オラリティ」の考え方からきていたのではないでしょうか?(ボウムよりも200年弱、グルントヴィのほうが早く生まれています。)
ボウムは、リテラシーについては科学的思考として人々を分断しているとしています。人々の気持ち、思考が分断されている今、対話のもつ意味は重要になってくると言っています。
また、参加を意味する‟participate”は、入るというような意味ではなく、分け合うというような意味だったそうです。統合された社会を分け合って住む、生きるというようなものだったのだとか。
「対話」によって、もう一度、新しい統合された社会を作っていこうということなのかもしれません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/デヴィッド・ボーム
ワークショップでも
いろいろな人と対話しながら進めるワールドカフェを代表とするホールシステム・アプローチ。一度でもその効果はあるような気がします。
数回同じメンバーで進めると、さらにつながっているような、同じミッションを分かち合って進めているような気持になってくださるようです。
これは、「対話」の賜物なのだなぁと感じることがよくあります。
従来のようにグループに分かれて、それぞれで作り上げた結論を最後に合意するというよりも、参加したみなさんの心の距離が近くなっているような気がします。
対話する前に「声」を出してみること。恥ずかしがらずに声を出してみることを促すようなインストラクションができるよう、試行錯誤を重ねていこうと思いました。
2017-02-14 | ブログ
2月9日に下呂市でRESAS(注)のデータを活用したワークショップの成果報告会があり、参加してきました。
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/resas/pdf/h28-12-05-seisaku_workshop.pdf)
この報告会は会場となった下呂市だけではなく、加茂圏域(美濃加茂市、川辺町、八百津町、七宗町、白川町、東白川村)の7つの自治体のみなさんが集まって検討したものです。複数の自治体によるものは少ないのだそうです。
この検討ワークショップのお手伝いをさせていただいていました。参加した皆さん、とても熱心で深く話し合いをされていましたので、そこにご一緒しているだけで楽しい時間でした。
少しですが、このワークショップについてご紹介します。
ワークショップの経緯
このワークショップは全部で5回。おおよその経緯をご紹介します。
○参加者:7つの自治体の地域おこし協力隊、企画、観光(商工会含む)、まちづくりの部署の方々
○ワークショップの流れ:
第1回 RESASを活用した圏域自治体の現状分析、コンテンツの引き出し、ブラッシュアップ
第2回 10年後の圏域の未来ビジョンを考える、第1回のアイディアを関連付ける、何かできるのか?を考える
第3回 現状の意見・想いを表出させる、地域資源の掘り起こし(追加)
第4回 事業に優先順位をつける、全体プロデュース(事務局)の機能・その担い手の育成を考える
第5回 それぞれの事業の実行・運営の体制を考える、人材の育成方法を考える、KPIを考える
○ワークショップの特徴:
このワークショップでは、①事業化を目指す、②事業化を実現するために必要な事務局の人材を発掘、育成すること、この二つを念頭に置いています。従って、ワークショップでは、事業の具体化、優先順位、進め方(スケジュールも含む)、事務局に求められる機能、そこに求められる人材、人材の育成のことまで話し合いました。本気で実現させようという意気込みがうかがえる内容でした。
RESASの分析に基づいた、さまざまな地域資源を活用したアイディアがでました。その中でも一番印象的なものが、外国人の活躍の場でした。
美濃加茂市には外国籍の人が多く(日本で3番目に外国人の割合が多いまちなのだとか)、その人々が働く場として「観光」があってもいいのではないかという内容です。2次産業だけでなく3次産業にも活躍の場があることは2世、3世の子どもたちの励みになるのではないかと思います。
日本に移住してきた方々の子どもたちが将来○○になりたい!という夢がかなえられる圏域となれば、素敵だと思いました。
もう一つ、印象的なことがありました。ワークショップを通して、参加してくださった皆さん、熱心に話し合ってくださいました。特に地域おこし協力隊のみなさんの熱い想いが、このワークショップ成功の大切な要因の1つでした。
まちづくりに必要な人材は、よそ者・若者・ばか者といわれています。地域おこし協力隊の方々は、地域を客観的に見ることができ、もちろん若いみなさんで、地域になじんでいこうと努力していらっしゃる方々なのだということを感じました。地域おこし協力隊の方々は「よそ者・若者・ばか者」を併せ持っているのでは?と思いました。
本当に地域の物的な資源と質的な資源をよく観察していらっしゃったので、地域資源を発掘するという場面では、もともと住んでいる人には当たり前すぎて見過ごしてしまう地域のお宝をたくさん出してくださいました。
ワークショップのデザインの特徴
このごろ、ワークショップという名称ではありますが、内容は「対話」をメインにしています。今回も「対話」で進める手法の一つ、「ワールドカフェ」的、「プロアクション・カフェ」的な進め方をしました。
グループワークをしながら、途中でメンバーチェンジをし、たくさんの視点からのアイディアを入れていきます。そして、また自分のいたテーブルへ戻って、足されたアイディアとともにブラッシュアップしていきます。
自分が選んだテーマについてだけ話すのではなく、他のテーマについて話しをすることで全体が統合され、どのテーマにも関わっているので、視野も広まり、アイディアもミックスされます。
「あのテーマで話していたアイディアとこのテーマのアイディを結ぶと…」「あちらのテーブルではこんな話が出ていたよ。このテーブルのこのアイディアと一緒にするのもいいね」となっていきました。
テーブルを変わるたびに、アイディアがブラッシュアップされていきました。
また、メンバーチェンジすることで交流も盛んになり、7つの自治体が連携する礎ができていったような気がします。
まとめ方が重要な要素
みんなで一つのものを見ながらアイディアを出したり、まとめをしたりすることが重要なのでは?と、ハーベストタイムを重要に考えるようになりました。
もちろん、今までも重要だと思っていたのですが、今回のワークショップや女性だけのワークショップ、自治体連携のワーキンググループのワークショップなど、つながり・連携がキーワードになる内容については、特に。全員で一つのものを創っていくハーベストタイムを設けることが大切なのでは?と感じています。
ここは、今後も検証していきたいと思います。
(注)RESAS(Regional Economy (and) Society Analyzing Syste):地方創生の実現に向けて、各都道府県・市区町村が客観的なデータに基づき、地域課題を抽出して「地方 版総合戦略」を立案するための基礎となるデータ(ビッグデータ)を活用した「地域 経済の見える化システム」。4 つのマップ、具体的には「産業マップ」「観光マップ」「人口マップ」 「自治体比較マップ」で構成されている。(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/resas/pdf/outline.pdf より)
2017-01-25 | ブログ
少子高齢化なので、人口を増やさなくては!と言われています。
これは、日本だけでなく、先進国の問題。だけでもなく世界の中で課題となりつつあるようです。
2014年度に国内の自治体がつくった『まちひとしごと地方創生総合戦略」の目的は人口増でした。
統計局のピラミッド図を見てみると、日本やイタリア、ドイツはまるでソフトクリームのようです。
国力として人口が増えるというのは望ましいといわれていますので、ソフトクリームのコーンの部分がもっと太くなっていないと、よろしくないようです。
先進国の中でフランスは釣り鐘型とまではいかなくても、タワー型(?若い年代の層が減っていない)ようです。
もちろん、フランスの結婚の形態PACS(同棲していても法的な優遇措置が受けられるhttp://www.madameriri.com/2012/01/11/今流行のフランス/)があるからという理由もあると思います。
ところが、この本『フランスはどう少子化を克服したか』を読んでみて、意外なところで子どもを産み、育てることを支援していたことが分かりました。
(https://www.amazon.co.jp/)
職場での産休、育休の取り方、取る環境、保育園事情などはもちろんですが、一番納得した事項をご紹介します。
教えてもらわないとわからない
「子育て」は人間だから、自然に、本能でわかるよね!というものではないですよね。幼い時から小さな子どもに接したり、あやしたり、大人が子どもを扱うのを見ていると、自然に接することができるのだと思います。
核家族になると、なかなかそのような機会に恵まれる機会が少ないですよね。
そして、今はお掃除のしかたもノウハウ本があったり、お掃除の達人のセミナーがあったり…学んで実践する、という方が少なくないような気がします。
だったら、子育ても!
と思うのですが、すでに子育ての雑誌やノウハウ本はありますが、子育ての基礎の基礎をマンツーマンで体系的に教えてくれるところは、なかなか見つけにくい気がします。
フランスでは、出産後3泊4日で退院します。(もちろん、パパは産休)
入院中の3日間は自宅で家事をこなし、産婦人科に通って、ママと一緒に赤ちゃんの世話のしかた(沐浴、おむつ交換、ミルクの作り方、授乳のコツなど)を教えてもらいます。
これで、ママまたはパパと赤ちゃん、二人の時間を過ごす準備ができます。
そして、帰宅後11日は「赤ちゃんと知り合う時間」と言われているそうで、赤ちゃんのペースに合わせることを体験し、赤ちゃんとはこういうものなのだとか、こんなふうに扱うんだということを体得していくのだそうです。
この時間が男性にパパとしての自覚を養い、子育ての自信も芽生えてくると言います。この本では「男を2週間で父親にする」とありました。
昨年、女性の活躍推進ワークショップでお試しプロジェクトとして、「カミーノフェス」というのをしました。いくつかの分科会(というよりも参加してくださった女性がやってみたいことを小規模でやってみた中の一つに「パパと遊ぶ」というのがありました。
保育士の資格を持った女性がパパに子どもとの遊び方を教えてくれるというものでした。
そこに出席してくださったパパの感想に「赤ちゃんは、ここまで体をうごかしていいんだ、ということが分かりました。こわごわ遊んでいましたが、安心して遊ぶことができます。」とありました。
パパも赤ちゃんを育てたいし、遊んであげたいのに、どうしたらいいのかわからない。どのくらい力をいれていいのか?どのくらいの加減で遊んでいいのか?を知らなかったのです。
やはり、教えてもらうと安心して、赤ちゃんと接することができるのですね。
パパとママ、社会で育てる
パパにも赤ちゃんの扱い方が分かれば、パパに預けてママもお出かけしたり、お仕事したりも可能になってきますよね。
お手伝いではなく、対等の立場で育児ができそうです。この2週間の産休で、父親としての自覚と自信ができるのだそうです。(この本には、体験談も載っていました)
ママ一人で育児を背負うことはないのです。
そうなったらどんなに余裕をもって子どもと接することができ、子どものいる生活の楽しさを共有することができるでしょう!
そして、ほとんどのパパとママは2週間の産休を取るのですが、もちろん、有給で、3日間は雇用主が、11日間は国が賄っているそうです。
そして、職場でも事前に産休の日程を申請するのですが、実際の出産の日程に変更可能ですし、職場も後押ししてくれているそうです。
産休をとるほうも、職場に迷惑をかけないように仕事を段取りしておくそうです。
この制度が始まったのは2000年代のはじめだそうですので、50~60代の世代は産休などとったことがないので、違和感があるのはもちろんのことです。しかし、「仕事優先でしょう」と声にだしていうのは、大人として恥ずかしいことなのだそうです。
子どもは社会に必要な存在だということを理解しているからとのことでした。このような理解が広く浸透していることも子育てをママだけに押し付けるのではない、社会で見守っていくという環境になっていることがわかります。
フランスや合計特殊出生率が1.8ほどの北欧でも、社会が、国が育てるという政策がとられているようです。
「昔はこうだった」ではなく、社会の変化に即した安心して子供を産んで育てることができる環境を整えていくことが大切なのかもしれません。
その基盤には、子どもは両親だけの子どもではなく、社会全体の子どもという考え方が求められるのではないかと思いました。
地域社会の中でも、そんな優しい気持ちで子どもやパパママを見守り、声をかけたり手を出してあげたりすることも、安心して子育てできる環境の一つになっていくのでは?
となると、自分はどのようなことができるのか?実際に行動することができるのか?が問われてきます。大人の心がけも大切ですね。
勇気をちょっとだして、私にできることをやってみよう!と思いました。
2017-01-13 | ブログ
以前から気になっていた「マーケティング」。よく耳にするのですが、一度、読んでみたいと思っていました。
入門編を読みました。わかりやすい理論の解説と事例があり、大まかな考え方が良く分かりました。
『マーケティングのすゝめ ~21世紀のマーケティングとインベーション』フィリップ・コトラー、高岡浩三著、中公新書ラクレ、2016年。
(https://www.amazon.co.jp/)
ここから、マーケティングとファシリテーションの関係を考えてみました。
マーケティングとは?
ざっとまとめると…
・自分(自社)が提供できる価値(事業)は何か
・自分(自社)にとっての顧客は誰なのか
・自分(自社)の顧客が好み、あるいは欲しているモノやサービスは何なのか
をつかんで、競合相手(他社)に勝つには、どうしたらいいかを自問し続けること。
そして、顧客にとって、価値のあるモノやサービスを通して、顧客の問題解決のお手伝いをすること。
さらには、より多くの人のために、より良い世界の構築を目指すもの。
というようなことでした。
最終の目的は、企業が儲かるために、どのようなモノやサービスを売れば良いのか?ではなく、
より良い社会、世界を作っていくことだったのです。
大きなところに目的があったのですね。
マーケティングの4段階
マーケティングは現在、4.0の段階に入っているのだそうです。発達の段階を整理してみると…
マーケティング1.0=製品中心(Mind)、製品の販売を目的とする、製品管理
1950年代~(高度成長期) 製品に対する需要を生み出すことがマーケティングの役割。
マーケティング2.0=消費者志向(Heart)、消費者を満足させることに知恵を絞る、顧客管理
1970年代~(オイルショック以降) 効果的に需要を創出するには、マーケティング活動は「製品中心」から「消費者中心」に。
1980,1990年代~(パソコンの普及、インタネットの発達) 人間の感情に焦点を当て、消費者のハートをつかむ。
マーケティング3.0=価値主導(Spirit)、より良い社会を実現するという崇高な目標を掲げて消費者の価値観に訴える、ブランド管理
21世紀~ 社会的価値や顧客にとっての価値を顧客とともに共創し、クラウドソーシングを活用しながら価値を生みだす。
消費者は、グローバル化した世界をより良い場所にしたいという思いから、自分たちの不安に対するソリューションを求めるようになった。
マーケティング4.0=(これからのマーケティング)自己実現、個々の自己実現欲求を満たす製品やサービスへのニーズが台頭してきた。企業はそこにフォーカスして、カスタマイズした製品やサービスを提供する。マーケティングは、この動きを後押し。
「顧客」は?
ここで、マーケティングに大切な「顧客」とは誰か?という問いが出てきます。
21世紀の顧客は、従来のいわゆるお客さまではなく…
・対外的な顧客=すべてのステークホルダー
・社内的な顧客=その業務にとっての価値提供先
ということで、すべてのヒトが顧客になるのが、マーケティング4.0の考え方です。(チャンスは無限に広がっている!)
そして、大切なのは、無限の顧客が抱えている問題を見つけることだそうです。
顧客の問題にも2種類あり、
・顧客が認識している問題
・顧客が認識していない問題(現時点では問題として認識していないが、第三者から指摘されると「それが解決されればたいへんうれしい」と気づくような)
後者の問題を探すことが非常に大切で、それは残念ながら「必死に考えるしかない」と。
イノベーションとリノベーション
もう一つ、大切な事柄は、イノベーション。
イノベーションとリノベーションの違いを認識して、イノベーションを起こしていかなくてはマーケティング4.0にはなりません。
イノベーションは、「顧客が認識していない問題」の解決から生まれる成果であるため、顧客が認識していない問題を「発見」することが何よりも重要になります。
リノベーションは、消費者調査で把握できる、顧客が認識している問題の解決から生まれる成果。イノベーションがおこったあとに発生する顧客の不満や問題を解決するプロセスから生まれた成果。
分かりにくいのですが、家電で言えば…
現実に起こっている事象を記録する手段がなかった⇒【写真:イノベーション】⇒【シネマトグラフ(動画)映画:イノベーション】⇒【テレビ:(家庭で見ることができる)イノベーション】
テレビの発展 白黒→カラー(リノベーション)→液晶画面(リノベーション)→ハイビジョン化(リノベーション)
顧客が認識していなかったけれど、市場に出てくると「たいへんうれしい」解決策を出すことがイノベーションとなります。その後、マイナーチェンジしていくのはリノベーションです。写真がなかったときには記録を残しておくためには、文字や絵で残していました。風景画というのでしょうか?イベントなどを屏風絵にした日本画であったり、肖像画や浮世絵などもそのためにあったのではないかと思われます。大変な時間と手間をかけて記録を残していました。
写真が発明されたことで、「顧客」は思ってもいなかった時間と手間、(もしかしたら金銭的にも)かなり省くことができてうれしいと思ったのだろうと想像できます。そんなことができるなんて思ってもいなかったことができるようになった、これがイノベーション。
後は、その写真をどのように活用するのか?そのために使いやすいものにするとか、品質を上げていくということになってきますので、これがリノベーションの段階です。
ここまで、見てくると「イノベーション」を生み出すことの重要性が分かってきます。その後のリノベーションを生み出していくベースになるのです。
イノベーションを生み出すために
では、その重要なイノベーションをどのように生み出すか?アイディアはどのように生み出すのか?が気になってきます。
本書では、常に考えていること、考え続けることが求められると言っています。
一人で考え続けることは、とても大切ですし、考える基本です。
ファシリテーターの視点からすると、一人で考え続けている人たちが集まって対話をすれば、共創ができると言えます。
フィンランドの教育では、共創する社会を目指しています。知識資本主義の時代に対応するために、人間同士の信頼関係の上の対話によってイノベーションを起こしていこうという国家的な戦略なのです。これは、PISA調査の目的でもあります。(『フィンランドの国家イノベーションシステム』レイヨ・ミエッティネン、新評論、2010年)
共創の場をデザインし、進行していくのがファシリテーターなのではないかと考えています。
(https://www.amazon.co.jp/)
そういえば、フューチャーセンターも北欧の国スウェーデンで生まれ、イノベーションを起こすという目的を持って運営されています。(『フューチャーセンターをつくろう』野村恭彦、プレジデント社、2012年)
(https://www.amazon.co.jp/)
そして、フューチャーセンターには、ファシリテーターが欠かせません。
このフューチャーセンターは、企業だけでなく、というよりも役所が運営しているほうが多いのです。人々がより良い生活をしていくため、知識資本に基礎をおく社会に生き残っていくためには、イノベーションを起こすことが政策としても求められるということではないかと考えられます。
フューチャーセンターもさまざまなステークホルダーが集まって対話することでイノベーションにつながっていくという基本的な方針があります。
共創によるイノベーションを起こすためには、ファシリテーションは必須なのですね。
従来の解決方法では解決できない課題や、従来なかった課題などが山積している「公」としては、その課題の根本は何なのか?を探り、解決していく政策を行っていかなくてはなりません。そのニーズから、フューチャーセンターが必要とされている、されはじめているといえるのではないでしょうか?
フューチャーセンターのような人と人をつなげたり、より良い上質な対話の場を設けることが求められており、そのような場で市民の方々と様々な視点からの対話をしていくことが企業や行政、その他の社会課題を解決しようとしているステークホルダーにとってより良い未来を共創していくために必要なことのようです。
このような場をデザインし、創っていくことが、これからのファシリテーターにとっても重要な使命となってくるのでしょう。
そのような場になるように精進していこうと思いを新たにしました。